2022年度 阪崎利一賞授賞式&受賞記念講演
「食品由来感染症における検査法~昔と今~」

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2022年10月20日

目次

2022年度 阪崎利一賞 授賞式

日水製薬の斎藤伸から勢戸和子先生に盾と記念品を授与

日水製薬は2022年度の阪崎利一賞の受賞者として大阪健康安全基盤研究所の勢戸和子氏を選考し、2022年10月20日に授賞式を執り行いました。当日は日水製薬 取締役執行役員の斎藤伸から勢戸先生に賞状と盾の授与が行われました。

阪崎利一賞はCronobacter sakazakiiの発見者で、日本の食品微生物学の第一人者として知られる阪崎利一博士の偉大な功績をたたえて2010年に創設された顕彰事業です。阪崎利一先生は、特に食品由来感染症の起因菌およびその迅速検査を研究課題として取り組まれました。阪崎先生は国立予防研究所(現・国立感染症研究所)に勤務する傍ら、腸炎ビブリオをはじめ、数々の腸管系病原菌の研究に従事され、朝日文化賞や晩年には野口英世記念医学賞を受賞するなど、日本の細菌学の発展に貢献されました。本賞は関係領域の学識経験者により選考され、阪崎先生の意を継承する研究者に対して今後の活躍を期待して授与しています。

授賞式の終了後には、食品衛生検査セミナーも開催し、勢戸先生に受賞記念講演としてこれまでの食品微生物の検査法について振り返っていただくとともに、東京顕微鏡院の森哲也氏に昨今のHACCP制度化などで注目されている「環境検査」の重要性や具体的な方法についてご解説いただきました。

2022年度 阪崎利一賞 受賞記念講演 食品由来感染症における検査法~昔と今~

地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所
勢戸 和子 先生

1985年に大阪府立公衆衛生研究所 公衆衛生部 微生物課、96年より同研究所 主任研究員を務める。2017年より地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所(※)企画部 精度管理室 室長に就任。21年に定年退職後は、神戸市医師会看護専門学校などで感染症学や微生物学などの分野で後進の育成に尽力している。
※2017年に大阪府立公衆衛生研究所と大阪市立環境科学研究所が統合・地方独立行政法人化して発足した組織

はじめに

私が大阪府立公衆衛生研究所(以下、公衛研)に入所した1985年は、細菌検査の方法が大きな変化を遂げる過渡期であったように思います。それまでは顕微鏡観察や分離培養法が基本でしたが、85年頃を境により効率的に目的菌を分離できる様々な増菌培養法や選択分離培地(特に酵素基質培地)、より迅速、簡便かつ高感度な検出を可能とする免疫学的検査法や遺伝子検査法などが次々と開発されました。

本日は、そうした検査法の変遷について、下痢原性大腸菌の検査法を中心に紹介していきます。