2023年度「食品衛生検査セミナー」
開催報告

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2023年10月26日

島津ダイアグノスティクス株式会社は2023年度の阪崎利一賞の受賞者として一般財団法人日本食品分析センターの前川幸子氏を選考し、10月26日に神奈川県川崎市のShimadzu Tokyo Innovation Plazaで授賞式を執り行いました。

阪崎利一賞は、日本の食品微生物学の第一人者として知られる阪崎利一博士の偉大な功績をたたえて2010年に創設された顕彰事業です(阪崎博士は腸内細菌科の微生物“Cronobacter sakazakii”の菌名の由来にもなっています)。

同日には、授賞式と合わせて、食品衛生検査セミナーも開催され、前川氏が受賞記念講演として食品検査(特に微生物に起因するクレーム食品の試験)について解説を行うとともに、株式会社島津製作所の四方正光氏が機器分析を中心とした食品微生物検査の分野におけるソリューションの紹介や、2019年から取り組んできた新型コロナウイルス検出試薬キットの開発秘話などを披露しました。また、セミナーでは島津ダイアグノスティクスが主催した「2023年度 細菌検査精度管理サーベイ」の結果に関する報告も行われました。

目次

受賞の言葉

島津ダイアグノスティクス株式会社の小野徳哉社長(左)から前川幸子氏(右)に阪崎利一賞を授与

このたびは阪崎利一賞をいただき光栄に思うとともに、身の引き締まる思いです。私自身、日本食品分析センターに入所してから今日に至るまで、阪崎先生の著書を参考にするなど、阪崎先生は微生物学に携わる者にとって、まさに“雲の上の存在”です。そうした先生のお名前を冠した賞をいただけることには、感謝の念しかありません。

私の今後のミッションは、『私がこれまで経験してきたこと、培ってきたこと、先輩方に教わってきたことを、これから微生物の検査に携わる方々につなぐ』であると思っています。本日の講演をはじめ、今後も少しでも皆様のお役に立つことができれば幸いです。

食品衛生検査セミナー賞(阪崎利一賞)受賞記念講演
微生物に起因するクレーム食品の分析手法

一般財団法人日本食品分析センター
微生物部 大阪支所 微生物試験課
前川幸子氏

1997年 財団法人日本食品分析センター入所、東京本部 微生物制御課において抗菌グッズや殺菌剤、防カビ剤などの微生物を用いた評価試験を担当、製品に合わせた試験設計や分析などに従事。その後、微生物試験課において食品衛生関連の微生物検査全般を担当するとともに、食品企業向けの微生物セミナーの企画、講師などを担当。多摩研究所 微生物研究課で微生物の検査や同定、クレーム食品の対応などを経て、2018年より大阪支所 微生物試験課。現在は微生物部 副部長として勤務。

日本食品分析センターの業務と品質保証

私が所属する日本食品分析センターは、食品の安全性に関する試験、栄養や機能に関する分析、医薬品や医療機器の試験など、幅広い試験・検査を主業務としています。本日は、そうした業務の中から、特に微生物が関連するクレーム食品(異物・異常品)の原因究明に関する検査を中心に解説します。

当センターでは、品質管理に関する仕組みとしてISO 9001認証を取得しています。「正確な分析試験を迅速に行うこと」をモットーに、分析の“品質保証”についてはISO/IEC 17025の考え方を基本としています。そのため、特に分析業務では①広く認められ妥当性を確認した試験方法、②校正された機器および国家標準にトレーサビリティのある標準物質、③技術的能力のある分析試験者、④検体と結果のトレーサビリティの確保、⑤整備された試験環境、⑥内部精度管理の実施、⑦国内外の技能試験への積極的な参加――という7項目を特に重視しています。

微生物が関与する異物・異常品の種類

微生物が食品中で増殖すると、食品を分解することや、代謝産物を産生することで、さまざまな種類の異常を引き起こします。異常の一例を表1にまとめてみました。酵素が食品を分解して引き起こされる弾力の低下(軟化)、ガスの産生による膨張、色素の産生による変色、酸の産生による酸敗、粘性物質の産生によるネト(糸引き)の発生、微生物の増殖による濁りや異物(カビなど)の発生など、多岐にわたります。

以下に、関与する微生物の例などを紹介します。

異物・異常品の種類微生物の活動
変質(弾力低下・軟化)酵素による分解
膨張ガスの産生
変色色素の産生
酸敗酸の産生
濁り・異物微生物自体の増殖
ネト(糸引き)粘性物質の産生
表1 微生物によって発生する食品の異常

1) 膨張

ガスを産生する微生物が増殖すると、製品の膨張が起きる場合があります。微生物の種類によって産生するガスの種類に特徴があるため、膨張品のガス組成を分析することで、膨張の原因となった微生物をある程度推測できる場合があります。

例えば腸内細菌は二酸化炭素と水素を産生しますが、二酸化炭素の方が(水素よりも)量が多くなります。あるいは、乳酸菌(ヘテロ乳酸菌の乳酸発酵)や酵母(アルコール発酵)、カビは二酸化炭素のみ産生します。芽胞菌(好気性芽胞菌、嫌気性芽胞菌)は二酸化炭素と水素を産生しますが、その量は好気性芽胞菌では二酸化炭素、嫌気性芽胞菌では水素の方が多くなります(表2参照)。

空気の組成は窒素80%、酸素20%です。上記のようなガス組成は、膨張の原因微生物を推測する上で、非常に有効な手がかりとなり得ます。

微生物特徴
腸内細菌二酸化炭素と水素を産生(二酸化炭素>水素)
乳酸菌二酸化炭素のみ産生(ヘテロ乳酸菌の乳酸発酵)
酵母二酸化炭素のみ産生(アルコール発酵)
カビ二酸化炭素のみ産生
好気性芽胞菌二酸化炭素と水素を産生(二酸化炭素>水素)
嫌気性芽胞菌二酸化炭素と水素を産生(水素>二酸化炭素)
表2 微生物によるガス産生の特徴

2) 変色(着色)

微生物が関与して食品が変色する原因としては、主に「微生物が産生する色素による場合」と「微生物が産生した代謝産物と食品成分が反応する場合」が考えられます。

前者の一例としては、Serratiaが産生するプロジギオシン(赤色)や、Pseudomonasが産生するフルオレシン(緑色)などが知られています。一方、後者については、Weissella viridescenceが産生する過酸化物と食肉のニトロソへモクロームと反応して、コールミオグロビン(緑色)を生成するケースなどが知られています。

3) 酸敗

酸敗の代表的な一例として、フラットサワー菌と呼ばれる、ガスを発生せずに酸を生成する(pHを低下させる)好気性芽胞菌(Geobacillus stearothermophilusBacillus coagulansなど)が知られています。これらの菌が存在する缶詰食品では、膨張が起きず(容器がフラットな状態)で酸っぱく(サワーに)なります。あるいは、乳酸菌や酵母もpH低下の原因となる場合があります。

なお、酸敗の原因微生物を分析する場合、微生物自身が生成した酸で自滅することがあります。そのため、酸敗の原因調査では、なるべく早い段階で原因微生物を分離することがポイントとなります。

4) 異臭(変敗臭)

異臭の原因微生物は、においの種類によって推測できる場合があります。例えば、タンパク質が分解された場合、アンモニアやトリメチルアミン、硫化水素などが生成して「腐敗臭」や「不快臭」と呼ばれるにおいが発生する場合があります。炭水化物が分解されると、有機酸や低級脂肪酸などが生成して「酸敗臭」や「刺激臭」の原因となる場合があります。

その他、カビや放線菌、藍藻類による「カビ臭」、酵母による「アルコール臭」「シンナー臭」「スチレン臭」、乳酸菌による「アルコール臭」、好気性芽胞菌による「薬品臭」なども知られています。

においと微生物の関係の一部を表3にまとめています。ただし、「においの感じ方」は主観的であり、人によって感じ方や強さは異なります。においを手掛かりに分析を行う際は、可能であれば複数の人で確認を行い、意見交換を行うことをお勧めします。

微生物においの特徴
腸内細菌腐敗臭、糞便臭、アンモニア臭
嫌気性菌腐敗臭、糞便臭、アンモニア臭
好気性芽胞菌腐敗臭、糞便臭、アンモニア臭
乳酸菌酸性臭、脂肪酸臭、酪酸臭、不潔臭
好熱性好酸性菌フェノール臭、薬品臭
酵母アルコール臭、シンナー臭、スチレン臭
表3 微生物によるガス産生の特徴

クレーム食品の検査手順

1) クレーム食品検査の目的

原因究明を行う主な目的の一つは、異物・異常品の原因となった微生物を知ることです。それはお客様への説明(特に安全性に関する説明)の際に必要な情報となります。もう一つは、異物・異常品が発生した原因(混入経路など)を知ることです。その情報を基に、現場での再発防止などにつなげることができます。

2) クレーム食品検査の特徴

ただし、クレーム食品の検査は、日常的に実施している検査とは異なり、「迅速に原因を特定させること」が求められます。微生物を特定する場合、培養を伴うのでどうしても時間がかかってしまいますが(1週間以上かかる場合もあります)、「いかに早く原因を特定できるか」が“腕の見せ所”となります。

もう1点、「公定法が存在しない」「決められた試験法が存在しない」という特徴もあります。公定法に沿った検査を実施した場合であっても、必ずしも結果が得られるわけではありません。食品の種類や、クレーム食品が発生した状況など、さまざまな情報を基に発生要因を推測して、「適切な検査方法(培地組成、培養条件など)」を選択する必要があります。そのためには、微生物や食品に関する専門的な知識や経験が必要になります。

3) クレーム食品検査の実施時の留意事項

クレーム食品を検査するまでの留意事項として、最も大事なのは「できるだけ早く検査に着手すること」です。微生物は、増殖に適した環境になると、対数増殖期、停滞期を経て、死滅期に入ります。クレーム食品は、(食品で異常な現象が発生した時には)微生物がすでに死滅期に入っている可能性があります。あるいは、先ほど述べたように(微生物自身が)産生した代謝物で死滅している場合もあり得ます。ですから、できるだけ早く検査に着手するのは、非常に重要なポイントとなります。

また、検体の保管や移送の温度も重要なポイントの一つです。保管・移送時の温度帯は、異常品が発生した状況や食品成分などを考慮して選択することになりますが、基本的には冷蔵(可能であればチルド温度帯)が望ましいでしょう。常温では原因菌以外の微生物が増殖する可能性がありますし、冷凍では原因菌が凍結によって損傷を受ける可能性があります。

検体数が限られている場合は、開封のタイミングや方法にも注意が必要です。例えば、原因菌として嫌気性菌が考えられる場合、開封によって菌が死滅してしまいます。ガス組成分析やピンホール試験を行いたい場合は、開封のタイミングを慎重に判断する必要があるでしょう。

原因究明の検査手順

一般的に原因究明の検査手順は、①クレーム食品の状態・情報を把握する→②クレーム食品を顕微鏡で観察する→③クレーム食品から微生物を分離する→④分離微生物を用いて再現性を確認する→⑤原因菌の特定(同定)、という5手順で進めます(図1)。②の顕微鏡観察で得られる情報は多いです。我々は①②の情報を得た上で、微生物の培養に進むようにしています。

図1 原因究明のための検査手順

1) 手順①:クレーム食品の状態・情報を把握する

検査に着手する前に、できるだけ多くの情報を得ることが原因究明の重要な鍵となります。そのため、まずは検体の状態を確認します。特に殺菌条件や製品の特性(例えば水分活性やpHなど)、保存方法(例えば製造から発見までの温度など)の確認は、原因菌を推測・特定する上で、非常に有力な情報となります。また、検体の外観やにおい、pH、開封の有無、ピンホールの有無なども重要な情報です。

ここでのポイントは「正常品を用意して、(異常品との)比較ができるようにすること」です。例えば、においの原因菌を調査する前に、食品自体の(正常品の)においを確認しておいた方がよいでしょう。

【補足】ガス組成の分析は必要か?

前述のとおり、ガス組成は原因菌を推測する上で有力な情報になり得ます。一方で、「ガス組成を測定する機器を所有していない。ガス組成を測定しないと原因は特定できないのか?」という質問を頻繁に受けます。

ガス組成を測定しなくても原因を特定することは可能です。ただし、前出の表2に示すように、「大量の水素が検出されたので、嫌気性菌が原因ではないか?」「二酸化炭素がほとんどなので、乳酸菌・酵母が原因ではないか?」「空気の組成(酸素2割・窒素8割)に近いので、微生物以外が原因ではないか?」といったように、(原因菌の特定には至らないまでも)有力な情報源となります。

2) 手順②:異物・異常品を顕微鏡で観察する

実は顕微鏡観察は、有用な情報が得られる技術であり、クレーム発生の原因微生物の予測がある程度は可能になる場合も多いです。

また、ある程度の経験が備わってきたら、「目視で濁りが認められる場合は、1 mLあたり107個以上くらいの細菌数ではないか?」といったような推測も可能となります。

顕微鏡の視野に食品残渣が存在すると、微生物が観察しにくくなることがあります。そうした場合は染色してみるだけでも、ずいぶんと観察しやすくなることがあります。位相差顕微鏡を所有している場合は、そちらを使ってみることも有効です。

【補足】顕微鏡観察の実践的テクニック

顕微鏡観察はシンプルですが、有用な情報を得ることができます。ぜひ操作技術と観察力を身につけることをお勧めします。

顕微鏡観察の際に重要なポイントの一つは「ターゲットを定めて検体を採取する」という点です(私は「意味のあるプレパラートを作る」と表現しています)。例えば、異常品の変色部分や異物部分を採取してプレパラートを作る際、正常部分も採取して比較できるようにするべきです(図2)。

また、コロニーを観察する際、一般的にコロニーの中心部は古い細胞が多く、淵(周辺)の部分は新しい細胞が多くなります。例えば、カビの場合、胞子の部分の方が観察に適しているので、コロニーの中心に近い箇所から検体を採取した方がよいでしょう(淵に行くほど新しく、ほとんど菌糸のみになります)(図3)。

ターゲットの大きさを想定して、適切な倍率を選択することも重要です。

図2 プレパラートは正常部分と異常部分を比較できるようにする
図3 コロニーのどこから顕微鏡観察の検体を採取するか?

3) 手順③:クレーム食品から微生物を分離する

ターゲットとする微生物と分離培地に関して、一般的な組み合わせを表4に示しました。ただし、こうした組み合わせはあくまでも一例であり、異常品の検査の場合は、検体の成分や物性、異常発生に至る経緯などを考慮した上で、培養温度や培地成分のアレンジが必要になる場合もあります。

例えば、表4で「30~37℃で培養」といった表現がありますが、異常品が低温保管中に発生したのであれば、培養温度も低温にしなければ分離できない可能性があります。あるいは、塩分濃度が高い食品で異常品が発生したのであれば、培地成分に塩化ナトリウムの追加した方がよい場合もあります。

なお、推定が難しい場合は、ターゲットを絞らず、網羅的に検出できる培養条件を設定することをお勧めします。また、生育したコロニーは、観察して直ちに分離作業に進めるよう、(混釈法よりも)平板塗抹をお勧めします。

ここでのポイントも、正常品にも微生物が存在する可能性がある場合は、正常品も同様に試験を行い、正常品と異常品の比較ができるようにしておくことです。

【補足】特異的な条件での培養が必要な微生物の実例

液糖で膨張が発生したので、酵母が原因と推測して調査を実施した事例を紹介します。その際、グルコース濃度が2%のポテトデキストロース寒天培地(PDA)では、酵母は分離されませんでした。そこで検体が「液糖」であることを考慮して、グルコース濃度を10%に高めたPDAを調製したところ、酵母の生育が確認されました。また、スクロース濃度40%のM40Y寒天培地でも生育が確認できました。

対象培地の例培養条件の例
好気性細菌標準寒天培地、トリプトソイ寒天培地30~37℃
好気培養 または 嫌気培養
嫌気性菌GAM寒天培地、TGC寒天培地
乳酸菌MRS寒天培地
カビ・酵母ポテトデキストロース寒天培地(抗生物質添加)25℃
好気培養
好熱性好酸性菌M40Y寒天培地
好乾性のカビ・酵母(水分活性が低い食品)
 表4 微生物の分離培地の例

4) 手順④:分離微生物を用いて再現性を確認する

③で微生物が分離できたら、その微生物によって異常品と同じ現象が起こるか、再現性の確認を行います。なお、液体培地ではガスを生成しない場合もあるため、(再現性の確認は)正常品を用いて行うことをお勧めします。

変色品の再現性試験も、正常品に直接接種することが望ましいです。なお、培地に菌を接種してもコロニー上で着色が確認できない場合がありますが、培地に食品の成分を添加することで着色が確認できる場合があります。

5) 手順⑤:原因菌を同定する

オプションとして、同定試験によって学名を確定させることもあります。学名が明らかになれば、分離源や病原性、毒素産生、生育に関わる情報(生育温度や水分活性、pHなど)、制御に関わる情報(耐熱性や薬剤感受性など)などが得られます。

ただし、必ずしもすべての微生物に関して、これらの情報がわかるわけではありません。いわゆる“雑菌”のように研究者の研究対象となり得ない微生物の場合、情報は少ないですし、汚染原因の究明などに至らないこともあります。

おわりに~食品企業と分析機関のコミュニケーションが重要~

クレーム食品の原因究明は、例えば「微生物が生きているはずなのに分離できない」といったように、経験を積んでも苦労することは多いです。しかも、培養で原因菌が検出されないからといって、必ずしも死滅しているとは限りません。異常品が発生に至るまでには、複合的な条件が重なっていることもあるため、原因菌が特定できても、再現性が確認できないことも多いです。さらに、原因特定に時間がかかると、製造ラインではすでに原因菌が存在しないこともあります。培養条件の選定など、判断に悩む場面も多く、経験を積み重ねることが鍵となります。

そのため、クレーム検査で特に大切なことは「自社で発生したクレーム食品の事例と試験方法を蓄積すること」です。製品のことを最も熟知しているのは、製造・販売している企業自身です。分析力を養うのは何よりも経験です。経験や知識の蓄積が“強み”となるのがクレーム検査の大きな特徴です。経験したクレーム食品の分析データを組織内で管理・共有し、次世代に継承してほしいと思います。

また、同じような異常品のケースが他でも発生しているかもしれません。ウェブサイトや書籍などのクレーム事例に関する情報、衛生研究所や保健所が公開している回収事例などの情報なども参考にするとよいでしょう。

原因究明や再発防止、お客様への説明などは、食品企業が責任を持って行うことであり、我々のような外部の分析機関がお役に立てるのは、クレーム食品を分析し、結果を報告することに限定されます。先に述べたように、異常品の原因究明に際して「公定法」や「決められた試験法」は存在しません。いわば“未知の状態”から「このような培養条件であれば、原因菌が分離できるのではないか?」と仮説を組み立ててチャレンジしなければなりません。そうした状況下で異常品の原因を突き止めるには、異常品の状態や製品の性質に関する“情報”を総動員し、蓄積してきた知識や経験を活かしながら、固定概念にとらわれずに想像力を働かせることが求められます。そうした観点でいえば、普段から食品企業と分析機関の間で緊密なコミュニケーションを図り、情報の伝達や確認を行うことも重要な要素といえると思います。