
食品衛生検査セミナー2025 講演
プロテオミクス法によるMALDI-MS微生物同定技術
~MALDI-MSが遺伝子解析を超えた~
2025年10月15日

株式会社島津製作所
分析計測事業部 ダイアグノスティクス統括部
副統括部長 寺本 華奈江 先生
プロテオミクス法によるMALDI-MS微生物同定技術
~MALDI-MSが遺伝子解析を超えた~
「MicrobialTrack」の概観と特徴
株式会社島津製作所は2025年5月20日、MALDI-MSで微生物を同定するためのソフトウェア「MicrobialTrack」を上市しました。本ソフトウェアは、迅速かつ簡便に16S rRNA遺伝子の解析を超える同定結果が得られる独自のアルゴリズムを構築しています。なお、MicrobialTrackの現時点での解析対象は原核微生物であるため、本稿では「微生物」を原核微生物として扱います。
MicrobialTrack は、MALDI-MSの機種を問わずに導入可能なクラウドサービスで、既知の原核微生物(バクテリア・アーキア)を網羅した業界最大のデータベースサイズを有しています。約81,000種(394,000ゲノム)のバクテリア、約4,000種(8,000ゲノム)のアーキアを網羅しており、今までMALDI-MSでは解析対象外であった分類群も同定できる場合があります。
手間がかかるインハウスライブラリの作成は不要です。現時点で学名が付いている原核微生物は約18,000種ですが、ゲノムによりその存在が示唆される学名が付いていない原核微生物も、本データベースには含まれています。学名が付く前の新種が検出される場面もあり、その場合は属名とアルファベットや数字などが示されます。
本ソフトウェアでは、プロテオミクス法(概要は後述)によって、ゲノム情報と紐づいた理論的裏付けのある同定結果が得られます。ピークの帰属、推定タンパク質名やアミノ酸配列の提供により、バイオマーカー探索などの研究にも利用可能です。誰でも簡単に、同定を超えた、さらなる解析が可能となるソフトウェアです(図1)。
また、クラウドサービスのため、インストールや据付、バージョンアップ手続きが不要で、実験室から離れた場所にいても解析ができます。弊社が定期的にデータベースの更新を行うため、ライセンス期間であれば、お客様は更新などの手続きを行わずに最新バージョンをご利用いただけます(図1)。
MALDI-MSの機種は問いません。弊社のMALDI-8020/8030シリーズの使用を推奨していますが、他社装置で取得したデータでも解析は可能です。すでに他社のMALDI微生物同定システムを使用している場合でも、「既存システムで同定できない場合に、MicrobialTrackで同定する」といった利用もご検討ください。
