コンパクトドライを積極活用品質管理業務のさらなる強化へ

増加する微生物検査のニーズに簡便・迅速法で対応

株式会社関越物産 埼玉工場 様

2020年12月01日

こんにゃくやこんにゃく加工品の国内トップメーカーである関越物産様は、製品の安全性確保のツールとして、日水製薬の微生物検査培地「コンパクトドライ」シリーズをご活用いただいています。

近年、同社では、原料や製品の検査、施設環境の衛生検査、HACCPやFSSC 22000の運用状況を検証するための検査など、微生物検査の検体数が増加傾向にあります。そうした状況下でも“信頼できる検査結果”を維持するためのツールとして日水製薬の「コンパクトドライ」を効果的に活用しています。今回は、関越物産グループ様における簡便・迅速な微生物検査培地の活用の考え方について、研究開発室 兼 品質保証室の外山慶一次長と品質保証室 埼玉品質管理課の鹿山妙子主任に伺いました。

なお、関越物産様は自社工場として3工場(埼玉工場、埼玉毛呂山工場、群馬工場)を運営しており、いずれの工場も2018年にFSSC 22000認証を取得しています。(一部登録範囲外アイテム有)

関越物産・埼玉事業所の外観
関越物産・埼玉事業所の外観
製造商品
製造商品
研究開発室 兼 品質保証室次長の外山慶一様(右)、品質保証室 埼玉品質管理課 主任の鹿山妙子様(左)

関越物産グループの概観

―― はじめに関越物産の企業概要について教えてください。

外山氏 当社グループは「和の食材を切り開く総合食材商社」を目指して、多種多様な食材を取り扱っています。例えば、自社工場では、主にこんにゃくやしらたき、ところてん、およびそれらを使用した惣菜(例えばモツ煮込みなど)を製造しています。商社としての機能も有しており、おでん用の食材(大根など)や水産物(もずく商品など)をはじめ、様々な食材を調達しています。
また、グループ会社の株式会社健康豆元では豆腐や厚揚げ、がんもなど、株式会社生一麺では生ラーメンなどの麺類を製造しています。また、製造を委託している協力工場でも、和惣菜を中心に、様々な製品(茶碗蒸し、だし巻き玉子など)を製造しています。
自社ブランド製品だけでなく、プライベートブランド商品や業務用製品も取り扱っています。業務用は、弁当、総菜をはじめ、ファミレスや回転寿司などの外食店舗、学校給食、コンビニのレジ横のおでんなど、様々な食品で利用していただいています。

微生物検査室

コンパクトドライ導入の背景:製品検査、環境検査、保存試験など増加傾向

―― 微生物検査の方法や検体数について教えてください。

鹿山氏 当社工場の検体はもちろん、協力工場の検体を扱うこともあります。1日平均で約20検体、多い日は60~70検体ほどを扱います。
検査法は、混釈法と簡便・迅速法を併用しています。基本的に、菌が検出される可能性がある商品やお申し出(クレームや問い合わせなど)のあった商品は混釈法、菌が検出される可能性が低い商品(段階希釈をしなくても判定可能な菌数の商品など)は簡便・迅速法を用いています。簡便・迅速法としては、日水製薬の「コンパクトドライ」(一般生菌用、大腸菌群用、黄色ブドウ球菌用)を使用しています。

コンパクトドライは操作が簡便、培養時間も短縮できる

―― なぜコンパクトドライを採用されたのでしょうか?

鹿山氏 大きな理由として、培地の保管スペースの問題がありました。当社および協力工場の製品検査や環境のふき取り検査のほか、新商品の開発でも消費期限・賞味期限の根拠となる保存試験などで微生物検査は必要です。検体数は増加しており、培地を培養(保管)するスペースが足りない状況が悩みの種となっています(特に最近は保存試験の検体数が急増しています)。コンパクトドライは、シャーレと比べてインキュベーター内での保管スペースが格段に少なくなるので重宝しています。
また、シャーレよりもコンパクトドライはコンパクトなため、オートクレーブで滅菌廃棄する際も、シャーレより多く滅菌でき、効率的に廃棄も行えます。

コンパクトドライはシャーレ培養と比べて、保管スペースも削減できる

―― 混釈法も併用している理由は何でしょうか?

鹿山氏 例えば、お申し出対応では、菌種の同定まで求められる場合もあります。混釈法の場合、シャーレ上のコロニーの外観やにおいで、「これはバチルス属だろう」といった推測ができる場合もあります。簡便・迅速法であっても、微生物や微生物検査の知識や経験を積めば、同様の推測は可能とは思いますが、現状では同定が必要な場合は混釈法で行うことにしています。

コンパクトドライ導入の効果:検査業務の効率化や時短を実現

―― グループ会社や協力工場でもコンパクトドライを採用しているのでしょうか?

外山氏 グループ会社の健康豆元では、すべての微生物検査をコンパクトドライで行っています。健康豆元は検査担当者が当社と比べて少なく、また検査室の設備も当社ほどは揃っていません。かつ、そのような状況下で、微生物検査や理化学検査、官能検査、さらには工場の衛生点検など、様々な業務を行わなければなりません。検査業務の省力化、時間短縮は極めて重要な課題でした。それらの課題の解決に、コンパクトドライは大きな効果を果たしています。
協力工場のなかでも、コンパクトドライを採用する検査室は増えています。

―― 簡便・迅速法の導入で得られたメリットについて教えてください。

鹿山氏 操作手順が簡便なので専門的な知識がなくてもすぐに検査できるようになること、結果に個人差(バラツキ)が出にくいことなどは、メリットとして実感しています。ちなみに、結果の信頼性については、日水製薬の外部精度管理サーベイに参加して確認しています。
また、コンパクトドライが使いやすい点として、検体を培地に接種したら、自然に均一に広がるので、培養後の判定がしやすい点も挙げられます。

外山氏 培地調製が不要というメリットは、通常の検査時間を短縮できるだけでなく、緊急の検査が必要になった場合などでも有用です。特にお申し出対応のスピードは、企業の信頼性確保において極めて重要な要素です。当社のお申し出対応の基本は「スピードをもって」「正確に」「誠実に」という“3つのS”です。コンパクトドライは問題発生時の迅速な原因究明にも役立っています。

―― 費用対効果の面ではいかがでしょうか?

鹿山氏 検体数が増加するなか、混釈法だけでは、どうしても人件費、作業時間、培地の保管スペースがかさんでしまいます。コンパクトドライは(混釈法と比べて)1検体当たりの単価は上がりますが、全体的に見れば検査に要するコストは増えていません。

簡便・迅速法を活かして、品質保証の“本来の業務”に一層注力したい

―― 自社工場ではFSSC 22000も取得されています。

外山氏 直接的なきっかけは、取引先である大手量販店が、GFSI(世界食品安全イニシアチブ)が承認した食品安全管理規格の認証取得を推奨したことでした。とはいえ、その当時から、当社としても国際標準に沿った食品安全管理の仕組みを構築する必要性は感じていたので、GFSI承認規格(当社の場合はFSSC 22000)に取り組むのは自然な流れでした。
ただし、当社の経営層としては、FSSC認証取得工場という“看板”がほしかったわけではありません。目的は、あくまでも「工場を今より良くしたい」「工場の管理レベルを上げたい」という一心でした。その目標を実現する上で、微生物検査などの品質管理・品質保証に関わる業務は非常に重要な位置づけにあると認識しています。

―― FSSC 22000の認証取得は、こんにゃく業界では先駆的だったのではないでしょうか?。

外山氏 当社は、食品安全や品質管理はもちろん,様々な面で「こんにゃく業界の先頭に立って牽引していける企業でありたい!」という使命感や責任感を持っています。その一例として、例えば,安定同位体比質量分析を用いたこんにゃくの産地判別に関する特許を取得したり,厚生労働省の業種別HACCP手引書作成にも携わるなど、様々な活動に積極的に取り組んでいます。当社の微生物検査の体制についても、こんにゃく業界の関係者の皆様にとって参考になる部分があれば、と思います。

―― 最後に、今後、簡便・迅速な微生物検査をどのように活かしていきたいか、お聞かせください。

外山氏 検査で最も重要なことは「検査結果を工場にフィードバックして、改善などに活かすこと」です。培地調製や培養時間の短縮は、「これまで以上に品質保証の業務に時間が割ける」という状況の変化につながります。これは、品質保証部門にとって極めて大きな魅力ではないでしょうか。
当社の経営層は「食品安全に直結する活動は、必要なコストをかけて、しっかり取り組まなければならない」という信念を一貫して持っています。今後も、そうした経営層の思いに応えていけるような検査室の在り方を模索していきたいと思います。