発色酵素基質培地
コロニーを色で見分ける酵素基質培地
目的菌のコロニーを発色酵素基質の分解による着色で鑑別する特異性の高い培地です。従来のpH変化で鑑別する培地では雑菌が多く存在する試料の場合、pHの変化が周囲に広がると目的菌を見逃す危険性がありましたが、発色酵素基質培地はコロニーのみが着色するため、鑑別が容易です。
近年、集団食中毒の発生に伴い、汚染指標としての大腸菌群検査とともに大腸菌検査の重要性が再認識されています。食品や環境中の大腸菌および大腸菌群検査には、従来からデゾキシコレート寒天培地やEC培地を用いる方法が多く実施されていますが、判定面などでいくつかの問題点が指摘されています。XM-G寒天培地 およびX-GAL寒天培地 は、酵素基質法を利用した大腸菌・大腸菌群用の培地です。大腸菌と大腸菌群が特異的に保有、産生する酵素の活性を判定の指標とするため、大腸菌や大腸菌群の検査を確実に、しかも簡単に実施できます。
大腸菌群用
X-GAL 寒天培地
<食品衛生検査指針2004収載>
大腸菌および大腸菌群を簡単・明確に判定できます。
- 合成酵素基質(X-GAL)の処方により、大腸菌群を効率よく、しかも明瞭に鑑別できます
・大腸菌群は、青色コロニーを形成します。 - 大腸菌、大腸菌群以外の菌は、発育を抑制されるか、発育しても発色しません。
- 大腸菌群の発育支持能に優れ、損傷菌の検出にも有用です。
大腸菌・大腸菌群用
XM-G 寒天培地
<食品衛生検査指針2004収載> <環境省告示第62号(2021)収載>
大腸菌および大腸菌群を簡単・明確に判定できます。
- 2種類の合成酵素基質(X-GLUC、MAGENTA-GAL)の処方により、大腸菌と大腸菌群を1枚の培地で明瞭に鑑別できます。
・大腸菌は、青色コロニーを形成します。
・大腸菌群は、赤色コロニーを形成します。 - 大腸菌、大腸菌群以外の菌は、発育を抑制されるか、発育しても発色しません。
- 大腸菌と大腸菌群の発育支持能に優れ、損傷菌の検出にも有用です。
XM-G寒天培地とX-GAL寒天培地との比較
培地名 | X-GAL寒天培地 | XM-G寒天培地 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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使用目的 | 食品や環境材料中の大腸菌群の検出 | 食品や環境材料中の大腸菌および大腸菌群の検出 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
培地の特長 | グラム陰性菌選択培地に 発色酵素基質(X-GAL)が添加されており、大腸菌群を青色の発色で判別できます。また、損傷菌に対しても高い検出率を示します。 | グラム陰性菌選択培地に 2種類の発色酵素基質(X-GLUC、MAGENTA-GAL)が添加されており、大腸菌を青色の発色で、大腸菌群を赤色の発色で判別できます。また、損傷菌に対しても高い検出率を示します。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
コロニー色 | 大腸菌群:青色(青~青緑)のコロニー ※大腸菌群以外のグラム陰性菌は、発育しないか、 発育しても培地色~白色のコロニーを形成します。 |
大腸菌:青色(青~青紫)のコロニー 大腸菌群:赤色(ピンク~赤紫)のコロニー ※大腸菌、大腸菌群以外のグラム陰性菌は、発育しないか、発育しても培地色~白色のコロニーを形成します。 |
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発色機構 | 酵素基質X-GALは大腸菌群が特異的に保有・産生する酵素 β-ガラクトシダーゼにより分解され、ブロモクロロインドリンが生成します。ブロモクロロインドリンは酸化縮合し青色色素ブロモクロロインジゴを生成します。 注:XM-G寒天培地、X-GAL寒天培地に処方されている発色酵素基質(X-GLUC、MAGENTA-GAL、X-GAL)は、すべて食品衛生検査指針に収載された酵素基質です。 |
酵素基質X-GLUCは大腸菌が特異的に保有・産生する酵素 β-グルクロニダーゼにより分解され、青色色素を生成します。また、酵素基質MAGENTA-GALは、大腸菌群が特異的に保有・産生するβ-ガラクトシダーゼにより分解され、赤色色素を生成します。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
培地組成 |
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使用方法 | 培地44.3gを精製水1,000mLに加温溶解し、121℃で15分間高圧蒸気滅菌します。シャーレに約20mLずつ分注し、混釈または平板で、35℃±1℃、20±2時間培養します。 | 培地39.3gを精製水1,000mLに加温溶解し、121℃で15分間高圧蒸気滅菌します。シャーレに約20mLずつ分注し、混釈または平板で、35±1℃、20±2時間培養します。 |
サルモネラ用
X-SAL寒天培地
サルモネラは、日本において発生件数が常に上位の代表的な食中毒菌です。 X-SAL寒天培地は、発色酵素基質を用いているため、硫化水素非産生サルモネラも確実に選択分離できます。
特徴
- 本培地は、従来からの硫化水素産生による鑑別機能に加え、酵素基質の発色による鑑別機能を付加したサルモネラの選択分離用培地です。
- 1枚の培地で硫化水素産生サルモネラと非産生サルモネラを同時に鑑別することができます。このため、サルモネラの検出率を高めることができます。
培地の使用法
- 本品68.2gを精製水1,000mLに加温溶解し、約20mLずつシャーレに分注して平板とします。 注:高圧蒸気滅菌をしてはならない。
- 培地表面を十分に乾燥させてから使用します。 被検材料をそのまま、または増菌培養後塗布し、35±2℃で21±3時間培養します。
鑑別法
- サルモネラは黒色から緑色の半透明集落(硫化水素産生株は黒色から深緑色、非産生株は緑色)を形成します。
- サルモネラ以外の多くの腸内細菌はピンク~赤紫色の集落を形成します。 たとえば大腸菌群は赤色不透明集落(まれに酵素基質を利用し集落中心部が青色になることがあります)、プロテウスは褐色透明集落を形成します。
Salmonella H2S(+)
Salmonella H2S(-)
Proteus属
Citrobacter属
Pseudomonas属
組成
68.2g(培地1L)中
ペプトン | 18.5g |
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肉エキス | 2.5g |
酵母エキス | 1.0g |
乳糖 | 10.0g |
白糖 | 10.0g |
L-リジン塩酸塩 | 5.0g |
チオ硫酸ナトリウム | 2.0g |
クエン酸鉄アンモニウム | 1.0g |
クエン酸ナトリウム | 1.0g |
胆汁酸塩 | 2.0g |
ニュートラルレッド | 0.03g |
発色酵素基質 | 0.2g |
カンテン | 15.0g |
pH 7.0±0.2 |
黄色ブドウ球菌用
X-SA寒天培地
発色酵素基質の利用により24時間の培養で黄色ブドウ球菌の鑑別が可能です。
特徴
- 本培地は、発色酵素基質を用いた培地で、黄色ブドウ球菌( Staphylococcus aureus )の判定が36±1℃、23±1時間培養で可能です。
- 集落に色が着くため、簡単・明瞭に判定できます。
- グラム陰性桿菌、腸球菌、酵母様真菌の発育は抑制されます。
培地の使用法
- 培地表面を十分に乾燥させてから使用します。
- 被検材料をそのまま、または増菌培養後塗布し、36±1℃、23±1時間培養します。
※培養温度、培養時間を厳守してください。
鑑別法
- 発色酵素基質により黄色ブドウ球菌は、青(水)色の集落を形成します。
- Bacillus sp.が発育し、薄い青(水)色集落を形成することがあります。扁平状で光沢のない集落を形成しますので、グラム染色などで鑑別してください。
- 黄色ブドウ球菌の確定には、コアグラーゼ試験等の性状試験を実施し、同定してください。
組成
51.0g(培地1L)中
ペプトン | 13.0g |
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肉エキス | 3.0g |
硫酸リチウム | 10.0g |
マンニット | 10.0g |
寒天 | 14.0g |
選択剤 | 0.7g |
発色酵素基質 | 0.3g |
pH 7.3±0.2 |
腸炎ビブリオ用
X-VP寒天培地
<食品衛生検査指針2018収載>
X-VP寒天培地は、発色酵素基質を用いているため、TCBS寒天培地で見分けにくかった菌も確実に選択分離できます。
特徴
- 酵素基質による集落の発色を原理としてるため鑑別は明瞭です。 (TCBS寒天のように近接集落の影響を受けません)
- V. vulnificusは淡桃色~赤紫色の集落として鑑別できます。
培地の使用法
- 本品102.4gを精製水1,000mLに加温溶解し、約20mLずつシャーレに分注して平板とします。
注:高圧蒸気滅菌をしてはならない。 - 培地表面を十分に乾燥させてから使用します。 被検材料をそのまま、または増菌培養後塗布し、36±1℃、21±3時間培養します。
鑑別法
- 腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)は青~青緑色の集落を形成します。
- V. vulnificus、V. cholerae、V. mimicusは淡桃色~赤紫色の集落を形成します。
- V. alginolyticusは発色せず白色集落を形成します。
- 大腸菌群やビブリオ属以外の菌は発育が抑制されます。
腸炎ビブリオ
V. alginolyticus
V. vulnificus
V. cholerae
V. mimicus
組成
102.4g(培地1L)中
ペプトン | 10.0g |
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酵母エキス | 5.0g |
白糖 | 30.0g |
チオ硫酸ナトリウム | 6.4g |
クエン酸ナトリウム | 10.0g |
塩化ナトリウム | 20.0g |
ピルビン酸ナトリウム | 5.0g |
胆汁酸塩 | 3.0g |
選択剤 | 0.27g |
発色酵素基質 | 0.25g |
カンテン | 12.5g |
pH 8.8±0.2 |
セレウス菌用
X-BC寒天培地
食品中のセレウス菌(Bacillus cereus)を発色酵素基質により選択分離する培地です。
特徴
- セレウス菌は青~緑色に発色し、セレウス菌以外の大部分の夾雑菌は、選択剤により発育が抑制されるか、発育しても微小集落を形成し発色しないので、鑑別が明瞭です。
培地の使用方法
- 65.2gに1,000mLの精製水を加え、沸騰水で100℃20~30分間加熱して溶解した後、約50℃に冷やし、約20mLずつシャーレに分注します。注:高圧蒸気滅菌をしてはならない。
- 培地表面を十分乾燥させてから使用します。被検材料をそのまま、または増菌培養して塗布し、35±2℃で24±2時間培養します。
鑑別法
- セレウス菌は青~緑色に発色した集落を形成します。
- 一部のブドウ球菌は白色の微小集落を形成することがあります。
組成
62.5g(培地1L)中
ペプトン | 10.0g |
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肉ペプトン | 15.0g |
塩化ナトリウム | 5.0 g |
グリシン | 10.0 g |
マンニット | 10.0 g |
選択剤 | 0.01 g |
発色酵素基質 | 0.15 g |
カンテン | 15.0 g |
pH7.0±0.2 |
クロノバクター属菌用
XM-Sakazakii寒天培地
2種類の発色酵素基質により、クロノバクター属菌(Cronobacter spp.)と大腸菌群を同時に検出できます。
「※Cronobacter spp.は旧名Enterobacter sakazakii(サカザキ菌)といい、日本の細菌学者 坂崎利一先生が発見された腸内細菌目細菌である。」
特徴
- 夾雑菌が多い検体においては、42~45℃で24±2時間培養することによりクロノバクター属菌の選択性が向上する。
培地の使用方法
- 45.4gに1,000mLの精製水を加え、121℃15分間高圧蒸気滅菌後、約50℃に保ちます。
- 約20mLずつシャーレに分注し、混釈培養または平板塗抹培養します。
- 培養は、35±2℃で24±2時間培養します。
- 夾雑菌が多い検体においては、42~45℃で24±2時間培養します。
鑑別法
- クロノバクター属菌(Cronobacter spp.) は、青~紺色の集落を形成します。大腸菌群は赤紫色に発色します。
組成
45.4 g(1 L分)中
ペプトン | 15.0 g |
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酵母エキス | 5.0 g |
塩化ナトリウム | 5.0 g |
リン酸一水素ナトリウム | 2.0 g |
硝酸カリウム | 1.0 g |
ピルビン酸ナトリウム | 1.0 g |
トリプトファン | 1.0 g |
ラウリル硫酸ナトリウム | 0.15 g |
発色酵素基質混合物(2種) | 0.2 g |
カンテン | 15.0 g |
pH7.0±0.2 |
製品および関連製品
用途 | 品名 | 製品コード | 包装 | 希望納入価格 | 状態 | 貯法・使用期限 |
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大腸菌群の選択分離培地 | X-GAL寒天培地 | 05631 | 300g | ¥12,000 | 顆粒 | 室温・防湿、製造後36ヵ月 |
大腸菌・大腸菌群の選択分離培地 | XM-G寒天培地 | 05632 | 300g | ¥16,000 | 顆粒 | 室温・防湿、製造後36ヵ月 |
サルモネラの選択分離培地 | X-SAL寒天培地 | 05140 | 300g | ¥16,000 | 顆粒 | 室温・防湿、製造後36ヵ月 |
黄色ブドウ球菌選択分離用 | アキュレート™X-SA寒天培地 | 51027 | 10枚 | ¥2,000 | 生培地 | 4~10℃(禁凍結)・4ヵ月 |
X-SA寒天培地 | 56230 | 10.2g×30 | ¥26,800 | 顆粒 | 室温・防湿、製造後2年間 | |
腸炎ビブリオの選択分離培地 | アキュディア™ X-VP寒天培地 | 05135 | 300g | ¥12,000 | 粉末 | 室温・防湿、製造後36ヵ月 |
セレウス菌選択分離用 | アキュディア™ X-BC寒天培地 | 05134 | 300g | ¥23,000 | 粉末 | 室温・防湿、製造後36ヵ月 |
クロノバクター属菌選択分離用 | XM-Sakazakii寒天培地 | 05136 | 300g | ¥24,500(受注生産品) | 粉末 | 室温・防湿、製造後36ヵ月 |