カビの基礎知識 - 応用編4. カビを検査する(実践編)
検査する試料が準備できたら、次はどのような検査をするかを考えます。ここでは主に定性検査と定量検査についてまとめていきます。
定性・定量検査
カビの検査は基本2通りになります。
①カビがいるかいないか、②カビ(主にカビ胞子)がどの程度付着しているかです。前者はカビが程度はどうであれいるのかいないのか、つまり定性検査です。一方、カビの胞子が付着している数値を知るのが定量培養です。これを以下の表でまとめています。
定性検査の具体例
カビがいるのかいないのかを知る2方法があります。
1つは寒天培地で培養する方法です。
寒天培養に検査試料を画線塗抹するか、または試料を直接培養します。それを25℃、1週間培養して生えてくるかこないかを評価します。寒天培地での実例を示します。左は塗抹培養です。右は直接寒天培地の上に米粒を置いて培養した粒培養です。
もう一つは液体培地で培養する方法です。液体培地は試験管や三角フラスコなどの容器にいれその中に試料を入れます。通常の培養条件で培養し液体中にカビが発生するかどうかで判定します。液体の場合、同定はそのままではできません。


定量検査の具体例
カビ数を評価する時に用います。検査試料にどの程度のカビがみられるか、または環境中にどの程度のカビがいるかを判定します。測定している対象は主には付着しているカビ胞子です。
培養には寒天培地を用います。試料を調製後その一定量を寒天培地に流し培養します。大まかな流れは以下の通りです。
定量培養 ×10希釈系列とする

まず試料の10倍希釈液を調製します。調製の仕方はブレンダーやストマッカーなどがよいでしょう。以下10倍段階希釈します。各希釈液を培地に一定量(例えば0.1 mL、0.2 mL等)ずつ分注します。
分注後にコンラージ棒などを用い高希釈平板から低希釈平板培地に拡げます。
この平板をインキュベータに入れます。培地は必ずタッパーのようなフタのできる容器に入れて培養してください。これは培地の乾燥を防ぐためです。
例えば25℃に入れて培養2~3日後の平板を一度確認してください。発育の速やかなカビがないかを確認するためです。
さらに4~5日後の平板を観てください。たいていカビが出てきます。その時に一度カビ数のカウントしてください。なるべく静かに扱ってください。
その平板をさらに培養します。7日後に最終カウントします。
判定時の生菌数(CFU)カウント
判定-カウント法(CFU)
1平板あたりのカビ数CFU範囲はどこか?

希釈平板のうちCFUが100以下の平板でカウントします。写真を参照してください。1平板でのカウントは100が限界です。それ以上はだいたいの目安にして多いことの目安にしてください。
判定 評価は大丈夫ですか
定量培養でどの数値をもって評価するか

具体例をあげます。この表を見てください。
ここでは103倍希釈平板で判定します。つまり100以下の平板は試験平板2回とも103倍希釈で2桁でありこれを平均してCFUを出します。
カビ数を評価できる平板例を示します。1平板に100以下のカビ数とはこのような例です。2枚とも集落数はみなさんの眼でも測定できるでしょう。数えてみてください。

混釈法と塗抹法(定量検査)
定量培養を実施するときによくある質問です。「定量は塗抹平板法ですか、それとも混釈平板法ですか?」といった質問です。細菌では通常混釈平板法が行われます。カビでも実際この混釈法を実施しているところがあります(結果はどちらでもあまり変わりません)。混釈法の方が検出限界値を下げることができるメリットがあります。
定量培養検査では検査数が複数あることが望ましいです。つまり検査N数が少ないとそれだけでの評価になりすべてがその数値で代表されてしまいます。検査数が少ない場合はなるべくN数を増やして平均をもって判断してください。
また、数値の読み方が100以下で判定したかどうか確認してください。1平板での正確なカビ数評価は、CFU10~100です。CFU数個または100以上は評価の対象にならないことが多いです。
簡易培地法
簡易培地として乾式簡易培地(コンパクトドライ)などがあります。
コンパクトドライは、調製不要の滅菌済み乾燥培地であり、1)操作が簡便、2)指標菌検査から主要食中毒菌検査まで幅広く対応、3)軽量・小型で持ち運びが容易、4)室温(1~30℃)で長期保存可能、5)国際認証取得という特長があります。
コンパクトドライ YM(酵母・カビ測定用)は、培地に直接試料液を接種し、蓋をして培養します。培養は2~7日になります。2~3日判定の迅速タイプもあります(コンパクトドライ YMR)。コンパクトドライのコロニーは、寒天培地に近い見た目です。

左側:コンパクトドライ YM
右側:ポテトデキストロース寒天培地
培養:25℃、7日間培養
